家族が困らないために―葬儀費用を準備する「遺言代用信託」という選択肢

■家族が困らないために―遺言代用信託という選択肢
もしも自分が亡くなり、お葬式を上げることになったら、まとまったお金が必要となります。最近利用する方が増えている直葬でさえも、何十万とかかることもあります。
葬儀で使おうと、亡くなった方の銀行口座から引き出そうと思っても、通常は相続の手続きが終了するまで口座が凍結されてしまうのでできません。
そうなると、誰かが一時的に立て替えなくてはなりませんね。
自分が亡くなったときに、家族が葬儀費用分のお金をすぐに受け取れるように準備したいと思うなら、「遺言代用信託」の活用も一つの方法です。
万が一のことがあった場合、相続手続きが終了しなくても、指定した受取人(相続人)の口座にお金が振り込まれます。
信託銀行などが取り扱っており、信託協会によると累計受託件数は2024年度で約26万件のようです。
■遺言代用信託、金融機関によってこんなに違う
この遺言代用信託をスタートしたEさんの例をご紹介します。
Eさんのご家族は決して仲が良いとは言えず、万が一の場合、相続手続きが長引く可能性があると考えました。
長女に後のことは任せたいのですが、葬儀費用を立て替えることがないよう、新聞記事で見かけた遺言代用信託の活用を決めました。
金融機関は3つにしぼりました。預けることができるお金(信託金)の額や手数料など、それぞれ異なるのがわかりました。
O銀行(インターネットでの取引が中心の銀行、Eさんは利用していない)
・信託金額は100万円以上100万円単位
・申込手数料・管理手数料ともに無料、運用報酬はかかる
・金銭信託で運用し、利金は契約者の口座に振り込み
・亡くなった後、受取人口座にお金を振り込む際の振込料は無料
・口座の開設は不要、来店も不要
M信託銀行(大手信託銀行、Eさんは以前取引していた)
・信託金額は200万円以上1円単位
・申込手数料・管理手数料ともに無料、運用報酬はかかる
・金銭信託で運用し、利金は元本に組み入れ
・亡くなった後、受取人口座にお金を振り込む際の振込手数料はかかる
・現在取引していない場合は、原則、対面での契約が必要
H銀行(地元民の多くが活用する銀行、Eさんは現在も取引している)
・信託金額は100万円以上1万円単位
・契約時の手数料は信託金額の1.65%、運用報酬もかかる
・5年もの定期預金で運用し、利息は元本に組み入れ
・受取人もH銀行に口座を作成する必要あり
・原則、対面で契約(営業担当が訪問も可能)
Eさんは以前取引していた、M信託銀行を利用したいと考えましたが、現在取引していないので、店舗に来るように言われました。Eさんは車椅子生活のため、バリアフリーでもない店舗に行くことができません。そのため、M信託銀行の活用を断念しました。
H銀行は、営業の方が訪問して契約ができますが、契約時の手数料がかかります。信託金が200万円の場合は33,000円。受取人がH銀行で取引していなければ、口座の開設が必要です。申込時の手数料がかかること、長女に口座開設してもらわなければならないことから、諦めました。
契約をしたのはO銀行です。こちらは口座開設も来店も不要です。インターネット銀行の経験がないので少し不安でしたが、手数料も運用報酬のみなのでこちらに決めました。
長女も大喜びです。万が一の時は、金融機関と書類のやり取りは必要ですが、相続手続きの終了を待つことなく、比較的早く、まとまったお金を得ることができるからです。
■生命保険と遺言代用信託、それぞれのメリットを考える
家族に葬儀費用分を渡す方法には、生命保険もあります。自分が被保険者となり保険料を支払い、法定相続人を受取人とすると、相続人一人当たり500万円の非課税枠という、遺言代用信託にはないメリットもあります。
どちらを選ぶ場合でも、家族間のトラブルにならないよう、金額や受取人を決める際には、遺留分も含めてバランスよく検討するようにしましょう。